探偵と消費者契約法(不当な契約条項など)
消費者契約法とは
「消費者契約法」という法律をご存知でしょうか?
同法は消費者と事業者の間で契約に関するトラブルが多いことから制定された法律です。
消費者と事業者の契約において、通常、両者の間には当該契約内容についての情報量や交渉力に圧倒的な差があることを考慮し、事業者側のある一定の行為のために消費者側に誤認があった場合は、当該契約を取り消すことができます。
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
※但し、消費者には事業のために契約を結ぶ者(法人または個人事業主)は含まれません。消費者=素人だとすれば、業務として契約に臨む法人や個人事業主はそうとは見なされないからです。
消費者契約法による取消の対象となる行為
取り消しの対象となる行為については、同法では下記のように定義されています。
不実の告知
消費者に対して当該契約の重要事項について事実と異なることを告げ、それが事実であると誤認させること。
断定的判断の提供
当該契約における不確定な事項につき「絶対」「確実」などの言葉を用いて説明をし、消費者にそれが絶対・確実であると誤認させること。
故意または重過失による不利益事実の不告知
契約に関する重要事項につき消費者の利益になる旨を告げ、逆に消費者に不利益になる事実を故意または重過失により告げず、消費者が当該不利益の事実が存在しないと誤認させること。
不当な勧誘行為
不退去
消費者の住居等で当該契約の勧誘をし、退去するように要求されても退去しないこと。
退去妨害または監禁
消費者を契約勧誘している場所から消費者が退去する意思を示したにもかかわらず、退去させないこと。
社会生活上の経験不足の不当な利用
不安を煽ったり、恋愛感情等に乗じた人間関係を利用して契約を勧誘すること。
霊感等による知見を用いた告知
合理的に実証することが困難な特別な能力により重大な不利益が生じる旨等を告知して不安を煽り勧誘すること。
判断力の低下の不当な利用
加齢や認知症による判断力を不当に利用して契約を勧誘すること。
契約前に債務の内容を実施
まだ契約をしていないのに契約内容を実施して費用を請求すること。
不当な契約条項
また、契約書の内容に消費者にとって不当な契約条項(事業者の損害賠償責任を免除する、事業者が自社の損害賠償責任を自ら決める等)がある場合、その条項は無効となります。
※但し、契約そのものが無効となるわけではありません。
消費者契約法は探偵にも適用
この消費者契約法は探偵の調査契約にも適用されます。この場合は言うまでもありませんが「事業者=探偵」「消費者=依頼者」となります。
これらの取り消しとなる行為は探偵の調査契約ではいずれも起こり得るもので、悪質・悪徳とされる探偵は故意にこれらの行為をおこなっていると考えられます。
また、調査キャンセル料についての取り決めは「不当な契約条項」に該当しやすく、内容にもよりますが実際に不当として訴えられたケースもあります。
例えば「契約金額の○○%の解約手数料」など一律に解約手数料を課すような条項は、探偵側の平均的損害を超える負担を消費者に強いるとして無効となる可能性が高いです。(消費者契約法第9条1号)
また「調査期間中は報告しない」などというのは信義誠実の原則に反し消費者の利益を一方的に害する条項として無効となります。(消費者契約法第10条)
現在の法律は消費者保護に重きが置かれていますので、探偵業法違反に該当しなくとも「消費者契約法違反」に該当するケースがあることを探偵業者は意識する必要があるでしょう。